イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
(マリア…。)
上の妹の名前に、テリザは目を丸くした。故郷を離れてから、きょうだいがどうしているか気になってはいたが、給料の一部を送るだけで、連絡はしていなかった。
「どーした。」
いつの間にか近くに来ていたアレクに声をかけられた。
「うん、ちょっと田舎の妹から手紙が来て…。ごめん、ぼうっとして…。」
急いで封筒をエプロンのポケットにしまいかけると、彼はコツっと手の甲でテリザの額を小突いた。
「え、な、なに?」
「バーカ。どうせ内容が気になって仕方ないんだろ。奥で見て来れば。」
鋭く指摘され、テリザは目線を泳がせた。
「ご、ごめん…」
「謝れとは言ってねー。」
テリザは目を上げ、少し目元を緩ませた。
「じゃあ…ありがとう。」
「...おー。」
ふっと笑って、アレクはくしゃりとテリザの髪を撫でた。