イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
テリザはそそくさと奥の部屋に入っていくと、微かに震える手で封筒を破いた。
テリザ姉さんへ。元気にしていますか?…と、手紙はごくありきたりの文で始まっていた。
少し遠くの病院で療養中の両親の経過は悪くないこと。兄も妹も、テリザからの援助で助かっていること。近場の屋敷で下働きをしていて一人暮らしをしている弟も多忙ながら元気でいること。それから……。
その下の文に、テリザはそっと目を伏せた。
あの人が、今の恋人ととても仲睦まじくしていること。
そんな良い報告がつづられていて、テリザはホッとした。妹の丁寧な字にもう一度目を落としてから、畳んでポケットにしまった。きょうだいのことは、心配することもなかったかもしれない。
―――あの人とのことを、マリアは知らない。こちらから聞くわけにはいかないけど、この手紙で知ることができて良かった。
絶対に、幸せになってほしい。
自分以上に傷ついたあの優しい人は…どうか必ず、幸せに。