イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
店の方に戻ると、丁度リュカが出ていくところだった。ノエルが、やれやれという風に肩をすくめている。彼はテリザの姿を認めると、顔を上げた。
「テリザちゃーん、追加注文していい?」
「あ、はい、ただいま。」
すぐに彼の方に行くと、ノエルは矢継ぎ早にメニューからデザートの名前を言う。
「ブルーベリースコーンとココアベーグルとワッフルとフィナンシェとそれから…」
そろそろ慣れてきたテリザはそれを書き留めてから、ちらりとノエルと見た。
「あの…余計な事かもしれませんが、リュカとは、喧嘩したんですか…?」
遠慮がちに訊くと、ノエルはひらひらと手を振った。
「ケンカも何も、いつもこんなんだから気にしないで。」
「どうしてですか…?」
その言葉に、ノエルは目をそらして溜息をついた。
踏み込み過ぎたと思い、テリザは慌てて口を開こうとしたが、ノエルの言葉に遮られた。
「リュカくんはお人よしすぎるんだよ。俺のことに口出ししてくるのが気に入らないんだよねー。」