イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
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「リュカ…!」
速足で、舗装された道を駆けていたテリザは、中央広場でキョロキョロとあたりを見回してようやくリュカの姿を見つけた。
「テリザちゃん…?」
彼は大股で歩いていたが、テリザの声に振り返り、目を丸くした。
「はい、忘れ物。」
彼のそばに駆け寄ってハンカチを差し出した。
「あ…忘れてたんだ。ありがとう。」
「いいえー。」
テリザはハンカチを渡してから、まじまじと彼の整った顔を見つめると、リュカはだんだんと顔がかあっと赤くなっていく。
「な、なに…?」
「リュカは…ノエルさんのこと、嫌
いじゃないでしょ。」
いきなり言い放たれ、リュカは一気に熱が冷めたように眉を寄せた。
「え、嫌いだよ。」
「どうして?」
テリザは間髪入れずに聞いた。
「…ノエルさんは俺のことが嫌いなんだよ。俺が昔、仲良くしようとしてもノエルさんは必ず離れていったからね。大体、あの本音を見せない態度が好きじゃない。」
その答えに、テリザは穏やかに微笑んだ。
「人を近付けない事情があるのかもよ?」