イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「事情?」
テリザは後ろに手をやってくるりと回った。
「わからないものだよ?このままにしてたらもったいないかもね。」
「…テリザちゃん、」
リュカは何か言いたそうに口を開きかけたが、テリザはそのまま踵を返してひらっと手を振った。
「引き留めてごめん!またね。」
「あ……。」
リュカが引き留める間もなかった。テリザは靴音を軽く響かせ行ってしまった。
リュカは少し困ったように、渡されたハンカチを見てからポケットにしまい、彼女の言葉を思い返して肩をすくめたのだった。
(遅くなっちゃった……。)
アレクに叱られてしまうと思い、テリザはもと来た道を駆け戻っていたが、ふと視線を感じて立ち止まった。
「っ…….」
見られているという鋭い感覚に不安になり辺りを見回すと、急に、爪が食い込むほど強く腕を掴まれ、そのまま路地に引き込まれた。
「?!?」