イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
「ふーん...テリザちゃんって、なんだか面白い子だね」
「そんなことないですよ。」
愉快そうに笑っているノエルを、テリザは苦笑してテーブルへと案内する。
「ご注文は何になさいますか?」
「んー...それじゃ」
ノエルは小首をかしげて手を伸ばし、テリザを見つめた。
「朝の静かなひと時を、美しいレディと過ごしたい」
微笑んだまま、ノエルはテリザの手を取り、口元へと引き寄せた。
「え......!?」
「そのようなメニューは当店にはございません、ノエルさん」
(ハルさん...!)
いつの間にかそばに来ていたハルに腕を引かれ、テリザはカウンターの中へと連れ戻された。
「すみません...助かりました」
「謝罪も礼も不要だ。困ったら呼べと言っただろう。厄介な常連客の応対は、そのうち覚えればいい」
(そうだよね...接客のコツもこれから覚えないと。)
「はい!」
「君は...返事だけは一流のようだな」
ハルの口元に、テリザにとって初めて見る小さな笑みが浮かんでいた。
(......ハルさんって、すごく優しい顔で笑うんだな)
「だがウェイトレスとしてはまだまだだ。外のテラス席のお客様の様子を見て来い」
「はい、わかりました」
返事をして窓辺の歩み寄り、外を覗こうとした時。
「わ...っ」
「......っ......」
店を覗き込んでいた男の人と、額がこつんとぶつかった。