イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
「こ、ごめんなさい...! お店に、何かご用ですか?」
テリザは恐縮して言うと、アメジストのような瞳と目が合った。
どこかアンニュイな雰囲気の彼は、銀色の髪越しに目を見開いた。
「貴女は......」
驚いたような顔で、テリザをよく見ようとするように顔が近付けた。
「......貴女はこの店の人?」
「はい、そうですけど...」
(どうして、こんくな風に見るんだろう......)
「......そうなんだ」
彼はゆっくりと瞬きした。
「人を探してたんだけど、いないみたいだ」
お店の中を見回しながら呟くと、彼はもう一度テリザに目を向けた。
(あ......)
ぶつかったテリザの額に、指先でそっと触れた。
「失礼なことをした。どうかお大事に」
「いえ、こちらこそ…」
彼の美しさにぼんやりしていたテリザは答えると、彼は表情を変えないままにすっと手を離した。
「また、会いに来る」
そう言って、彼は窓辺から離れていった。
(不思議な雰囲気の人だったな......)
彼の行ってしまった方を見ていると、
「意外と平気だったみたいだな」
不意に声をかけられ振り返ると、アレクが店に戻ってきたところだった。
「アレクさん...おかえりなさい。」
「ああ、遅くなって悪かった。...そこまで戻ってたんだが、会いたくないヤツがいたんだ」
(それって...さっきの人......?)
気になったが、アレクは何事もなかったように仕事に戻ってしまった。