イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
とっさに身体をひねって相手を見ようとしたが、ぎりぎりと腕を掴まれたまま離されなかった。
「あなた…リュカ様とどういう関係なの?!」
怒りに震える女性の声に、テリザは身を捩って手を解くと、振り向いた。
あの時…リュカにかばわれた時に、ブルーベルにいた、リュカのファンの女性の一人だった。
今、彼女はキッと口元を結び、テリザを睨みつけていた。
「どういうって…リュカはただ、お客様ですが…。」
「とぼけないで!」
テリザが正直に言うと、彼女は長い爪をテリザの目の前に突き付けた。
「さっきリュカ様と楽しそうに話してたじゃないの。」
「あれは、忘れ物を届けに行っただけです。」
淡々と事実を述べ、テリザは言葉を続けた。
「本当にリュカのことが好きなんですね。」
そう言うと、彼女はじろりとテリザを睨んだ。
「バカにしてるの?」
「まさか。」
テリザは淡く微笑した。
「リュカとうまくいくといいですね。」
テリザが言うと、彼女はぴくりと眉を動かした。