イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「あの舞踏会で、君には本当に助かった。もう代償は払わなくていいということだ。」
テリザは我に返ったように顔を上げた。
「あの、調査のことはもう解決したんですか?」
途端にハルは口ごもった。
「…それは、君の心配することではない。」
―――否か。
テリザは悟った。が、同時に…もう自分は必要ないのだと言われているのだと自分に言い聞かせた。
テリザはこくりと小さく頷いた。
「わかりました。じゃ、明日にでも…行きますね。」
ハルはふっと押し黙り、目をそらした。
「…ハルさん?」
「…すまない、何でもない。」
ハルは言葉を飲み込んだ。しかしテリザが頭を下げてくるりと背を向けかけると、彼は再び声をかけた。
「君は、本当にそれでいいのか?」
―――彼女が、迷っているように見えた。
瞳に揺らぎが見えた気がした。
しかし余計な口出しをしてしまったような気がして、ハルは質問を取り消そうと口を開きかけたが、テリザの答える方が早かった。
「はい。」
声は大きくはなかったが、聞き間違うことはなかった。
テリザはハルに向かって微笑してから、カウンターへと戻っていった。
彼女の後に続こうと踏み出しかけたが、客に声をかけられて断念した。