イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「自分のことを、『嫌な奴だと思えばいい』って言ってましたよね。」
テリザはアリアに向き直り、立ち止まった。
「リュカのことが好きな人たちの間でいさかいが多いんじゃないでしょうか…?」
アリアの表情が強張った。
「…仕方ないじゃない。リュカ様が誰のものにもならないんだから。」
アリアがそっと呟いた。その表情は苦く、テリザは胸が痛くなった。
「っでも、アリアさんは素敵ですから…そのために自分を貶めるなんて、勿体ないです。」
「私の何を知って言ってるのよ!!」
また怒気を含んだ声にひるみかけたが、テリザは顔を上げた。
「アリアさんは、一途に誰かを思い続けているんですから、それは、素敵なことです。」
―――アリアが完璧だとは思わない。だけど、自己嫌悪を含んだ言葉を聞いて、悲しくなった。それはテリザの中で、確かだった。
テリザの言葉を聞いて、アリアは少しの間、わけがわからないというふうに目を瞬かせていたが、ふっと口元を緩ませた。
「…変な子。」
テリザは微笑した。
「よく言われます。」