イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
それから...時間は飛ぶように過ぎて、気付けは閉店の時間を迎えていた。
夕日が差し込み出した店内で、砂糖のポットを棚に片付けるテリザにハルは声をかけた。
「テリザ、これからオーナーが店に来る予定になっているから、挨拶も兼ねてオーナー専用のティーカップでお茶を淹れてくれ」
「はい、分かりました」
(オーナーか... 『ラッド』 さんって名前だけ聞いてるけど、どんな人だろう)
手紙に書かれたのはサインだけで、中身はハルが書いたようだ。
アレクは先に帰っていき、ハルが店の奥へ戻った後、テリザは教わった通り、オーナー専用のティーカップを棚から取り出した。
(そういえば今朝...ノエルさんが、 『この店には秘密がある』 って言ってたな)
「おーい...ちょっといいかな」
優しげな低い声に、テリザは気づかなかった。