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イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~

第6章 思惑


(こんなに最低な私なのに……よくあんなお節介ができたな。)


そう考えた瞬間、急に心臓に違和感が走った。


「ぁっ……」


どくどくと胸が不規則に速く音を立てる。胸に片手を当てて俯き、ごくりと唾を飲み込むが、息が詰まったみたいで、喉が言うことを聞かない。

心臓の中をかき回されるような気持ち悪さ。テリザは近くのガスランプによりかかった。


(止まれ…止まれ…っ!)


願いが通じたのか、ほどなくして発作の波が去っていく。はぁはぁと苦しげに息をしながら顔を傾けると、近くでガラガラと音がして身をすくめた。

すぐ横を馬車が通って行き、テリザはびくっと震えた。


「馬鹿野郎!死にたいのか!」


怒号を浴びせかけて過ぎ去っていく従者の方を見る力もなかったが、テリザはどうにかふらりと立ち、ふーっと長く息を吐いた。しかし眩暈がひどくて、額に手を当てて俯いた。

このままクロムウェル邸に戻ってしまおうかとも思ったが、ハルとラッドにまた迷惑をかけたくはなかった。少し遅くなると言ってあるから...と思い、テリザは髪に通しかけた手を下ろすと、歩き出した。


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