イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
向かった先は、郊外の教会だった。前に見た時と同じように美しいステンドグラスと白い十字架が目に留まる。ただ違うのは、教会の中から光がこぼれていることだった。
(クリス…さんが、いるのかな。)
少し緊張しながら近づいて、扉に手をかけると、ゆっくりと押した。
開いていく隙間から目に入ったのは、背の高い、黒衣の男だった。彼は祭壇に立っている蝋燭を吹き消すと、台に乗せられた聖書を閉じようと横を向いた。
―――その瞬間。
息が止まった気がした。
サラリとした金色の髪の下は、驚くほど整った顔立ちだった。結ばれた口元には他とない色気があり、誰でも見とれてしまいそうだ。
そして何より、その瞳だった。
アイスブルーの澄んだ瞳には、底知れない孤独が映っていた。
そこに宿る、深い海のように冷たい光に、彼は多くのことを見てきた人だ……とテリザは直感した。