イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「どうされましたか?」
彼に怪訝な顔で質問され、テリザは我に返った。
「いえっ…あの…素敵な教会ですね。」
緊張を隠し、慌てて言うと、彼はふっと笑った。
(わ……)
笑うと、ますます綺麗―――。テリザはドキリとすると同時に、その笑顔にどこか不自然なものを感じた。
「そうですね。良い所ですから、よく近所の子供たちが遊びに来ますよ。」
「そうなんですか…。故郷の教会も、そうでした。」
「おや、最近来られた方なんですか?」
「ええ、隣町から…」
言いかけて、ハッとした。この街にいる以上、ラッド達のために、正体を知られてはいけない。話題を逸らさねばと思い、テリザはロザリオを服の下から出して見せた。
「これ、そこでもずっと愛用してたんです。」
それを見ると、クリスは目を丸くした。
「カトリックの方ですか。」
「はい。」
テリザは頷いて言葉を続けた。
「あまり良く思われていないのは知ってますけど…プロテスタントとの違いの間でも、良さは認めていますから…。」
弁解するように言うと、クリスは微笑んだ。
「神の愛に違いはありませんからね。素敵な考え方だと思いますよ。」
「…恐れ入ります。」