イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
同刻、クリスは夜の屋敷の前で立ち止まった。その手には、先程教会で拾ったロザリオがある。チェーンは劣化して切れていて、おそらく気づかずに彼女が落としてしまったのだろう。
差別対象になり得ることも恐れずに彼女がカトリック教徒だと言ってこれを見せてきたことを思い出し、この後特に仕事もなかったからここに届けに来た。
もし彼女がまた教会に来たりしたら、鬱陶しくてならない。また来てくださいなど、本心なわけがない。
表から入ってもよかったが、正面から入って使用人たちに貼り付けた笑みを見せるのが面倒で、度々依頼を受ける時に使うことのあった裏口から入ることにした。
しかしクリスが、いささか錆び付いた戸に手をかけた瞬間、それは勢いよく開いた。