テキストサイズ

イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~

第6章 思惑



「いやあああ!!!」


目に飛び込んだ事態に、クリスは目をむいた。

黒塗りの車がそこには止まっていて、彼女が中に押し込まれそうになっている。車の近くにいた数人の男はあっという間にテリザを拘束し、クリスが駆け寄ろうとするとともに、車は走り出した。


「っ……」


徒歩で追いかけようとするなど無意味だ。クリスはバン、と音を立てて中に飛び込んだ。リネンを抱えてているメイドや食器を運んでいる使用人たちが目を丸くする中、クリスは真っ直ぐに先程見た男の消えた方向に走った。まだそう遠くには行っていないはずだ。

広い屋敷だったが、使用人の女性の悲鳴がある方向から聞こえてきたのが目印となった。クリスは駆け出すと、一つの部屋にたどり着き、声もかけずに中に足を踏み入れた。


一人のメイドが、クリスの追っていた男に首を絞められている。もう窒息しそうになっているのだろう。手足をばたつかせる力もなく、男の手の下でぴくぴくと動いているだけだ。


男はクリスの姿を見ると目を見開いた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ