イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「諸君、ご苦労だった。いい仕事をしてくれたな。」
リックの声に、男たちは背筋を伸ばした。
「はっ。」
テリザを連れ込んだ男たちはテリザを取り囲むようにして立つと、リックは彼女の顎を掴んで顔を上げさせた。
「綺麗な顔をしているな。」
「やっ……」
テリザは身を捩って顔をそむけようとしたが、ぐいっと顎を引かれ無理矢理目を合わせさせられる。
グレーの瞳が、恐ろしい。テリザの体は震えていた。
「っ……」
「お嬢さん、俺は、単刀直入に言って、君の兄に恨みがあるのさ。取引を邪魔され、仕事ができなくなった。正義感溢れるラッド=クロムウェルが邪魔でかなわない。だから……君を攫った。」
彼はようやくテリザの顔から手を離すと、その場を行ったり来たりしながらテリザに話しかける。
「さて、君をどう使おうか?脅迫の中身も、考えないとな…。」
ニヤリとした笑みが、怖い。
テリザはカタカタと体が震えるのを感じながらも、彼を睨み上げた。
「こんなことしても…っ、意味がない!ラッド様は、そんなものに応じたりしない…!」
「黙れ。」
彼はテリザの横腹に蹴りを入れた。ぐっ…とテリザは咳込んだ。
「馬鹿を言うな。あのラッドが、妹を溺愛しているのは目に見えていることだと、君と彼を見た人は誰もが言っている。」