イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
(溺愛……。)
その言葉に、テリザは戸惑ってしまった。
「そんなわけ……ない。」
「あるんだな、それが。」
―――やめて。
そんなこと言わないで。
自分はいずれ消えないといけない人なのに……。
「……私のこと、好きにしたらどうですか?私はラッド様にとって、何の価値もないものなんですから。」
ふんっとテリザは鼻を鳴らすと、リックはくっくっとおかしそうに笑った。
「気の強い娘さんだ。……いいだろう。君の望むようにしてやろうか?」
男の手が、テリザの体に伸びてきた。
「っ……」
テリザは体を強張らせた。
―――大丈夫、終わったら、死ぬ力だけは残ってるから……。
彼女がそう思った瞬間。
「―――それまでだ。」
地を震わせるような、低い声がした。
軋みを上げて開かれたドアに、男のシルエットが立っていた。