イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「……随分と早い到着だったな、ラッド。」
リックはテリザから手を離すと、ラッドに向かって振り返った。
「お前が絡んでいるというのはやはり本当だったんだな、リチャードくん。」
ラッドはゆっくりと近づいてくる。声は落ち着いているようなのに、逆光になってその顔が見えないこともあり、余計に怖いような気がした。
「今はリックで通しているんだがな。」
「俺にはどうでもいいんだなー、それが。」
進み出たラッドの顔に、光が当たった。
その顔には笑みが浮かんでいたが、目が笑っていない。
―――ああ。
自分は、どれだけ彼に助けられればいいんだろう。
バカな自分に嫌悪感が湧くと同時に、彼に助けられることが嬉しくて、彼がどうしようもなく愛しくて、テリザの胸が震えた。