イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「―――やれ。」
リックが、部下に顎でしゃくって指示した。
すぐさま、男たちはラッドに向かって飛びかかる。
「おっと。」
彼は身軽にそれらをかわすと、反撃を開始した。
流れるような動きで男たちのみぞおちに拳を叩き込み、手刀を首に食らわせてはつぎつぎとなぎ倒していく。
「―――ふむ。」
なぜか、リックは感心したように笑っている。
どうして―――と思う間もなく、テリザは首根っこを掴まれ、そのままうなじにナイフを当てられた。
「おい、ラッド。これが見えないのか?」
リックが声を張り上げた。ラッドはぴたりと動きを止めると、周囲にたかっていた男たちはじりじりと彼を取り囲んだ。
「この女を死なせたくなければ、大人しくボコられてな。」
「……」
ラッドは感情の読めない表情で、体から力を抜いた。リックはせせら笑った。
「そうだ、いい子だな。せいぜい、早いところ気を失った方が―――」
しかし、リックは最後まで文章を続けることができなかった。
バン、と凄まじい音がして、彼の腕から一気に力が抜けた。
「ぐっ……」
テリザが驚いて振り返ると、彼の腕から、血が噴き出していた。