イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
「事件解決…みたいだね?」
「…それはどうだろうな。」
ノエルが笑って言うと、クリスは渋い顔をし、ボソッと呟いた。どういうこと?とノエルが聞き返すより前に、リックはノエルの部下に引きずられながらも振り返り、声を上げた。
「おい、これで終わったと思うなよ!上の者に、必ずこのことは伝わる。クリス、お前もだ…!」
皆はいっせいにクリスを見たが、彼は顔色一つ変えずに、冷静に返した。
「恨みは買い慣れている。負け犬の遠吠え一つ一つに耳を貸してられるか。」
リックは悔しそうに唾を地面に吐き出すと、警官たちに連れて行かれてしまった。
「……クリスさん、今のは?名前、知られてたみたいだけど。」
ノエルが彼に言うと、クリスは鼻を鳴らした。
「知るか。…大方、あいつの上司を俺が豚箱に叩き込んだとか、そんなもんだ。大体…」
「テリザ!」
不意にラッドの焦ったような声がして、二人は言葉半ばに会話を中断した。
テリザが、今にも意識を失ってしまいそうな様子で、ラッドの腕に倒れ込んでいた。
「どけ。」
医師でもあるクリスは、ノエルを押しのけて彼女のそばに歩み寄った。
「…熱が酷いな。大方、ストレスの所為だろう。仕事のさせすぎじゃないのか?」
クリスが彼女の額に手を当て、ラッドに向かって意地悪く言うと、ラッドはキッと彼を睨みつけた。
「そんなわけがあるかっ
断じて彼女を働かせすぎたりはしていない。」
「冗談だ、落ち着け。」