イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
―――焦った、なんてもんじゃない。
クリスを上に行かせ、予想していた展開を回避することはかろうじてできた。
だが、テリザが襲われそうになっていたのを見たとき、ラッドは完全に理性を失っていた。
―――守ると言ったにもかかわらず。
何度彼女を危険な目に遭わせてしまうのか。
彼女を抱きしめたくて、守りたくて、触れたい。
この腕に抱いて、二度と離さないと言ってやりたい。
それは許されないことだというのに。
そして自分は、彼女を守れたと言えるのだろうか。
(―――情けない……。)
ラッドは心配そうに、後ろのテリザに目をやった。
心なしか、少しだけ彼女の息がゆっくりになっているような気はした。