イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
**
「…です、おそらくは…」
「ありがとう…」
パタン、とドアの閉まる音がして、足音が遠ざかっていく。
しかしもう一つの足音は、テリザの眠るベッドに近づいた。
「……テリザ。」
ラッドの、大きな手がテリザの髪を撫で、頬に優しく触れる。
―――幸せで。
たまらなくて。
テリザは、うっすらと目を開いた。
「ラッド様……?」
「テリザ……。」
二人の間に、視線が交わされた。
何もかも、言わなくても伝わるような気さえした。
―――愛している。
この人を、愛している。
(でも……私は、彼と、一緒には……なれない。)
「ごめんなさい……。」
どれほどの意味を、想いを込めて言えたかは、わからない。
ただ、苦しくて、切なくて。
どうしようもなく、愛しかった。