イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第6章 思惑
ラッドは、変わらず優しい手つきでテリザの頬を撫で、たまらないほどの愛を込めた目で彼女を見つめた。
「何も謝らなくていい。何もだ。」
テリザは悲しげに微笑んだ。
「―――隣で、寝てくださいませんか。」
―――最後の、我儘。
どうか、一夜だけ夢を見させて。
ラッドが息を飲むのがわかった。
テリザはくすりと笑った。
「ごめんなさい、変な意味じゃないんですけど。ちょっとだけ……。」
ダメですか?とテリザは彼を見上げた。
「―――ああ。いいよ。」
ラッドは上着を脱ぐと、椅子にそれをかけて、シャツの首元を緩めると、掛け布団をめくった。
ラッドがテリザの華奢な体の横に体を横たえると、テリザは彼の胸に顔を埋めた。
(ラッド様の…匂い……。)
世界のどこでも、こんなに安心できるところがあるとは思えない。
ホッとして、泣きそうになった。
もっと彼の体温を感じていたくて、テリザは彼に抱きついた。
ラッドも、ぎこちなく抱きしめ返してくれる。