イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
すっと腕を引くと、ラッドは笑みを消し、真剣な眼差しをテリザに向けた。
「ここからが本題だが...君は、 『ブラッドレイ家』 の名前を、聞いたことあるかな?」
「ブラッドレイ家って...あの、ブラッドレイ家...ですか?」
「そうそう。うちと敵対していることで有名な名門貴族だ」
(やっぱり......!)
『クロムウェル家』 と 『ブラッドレイ家』 は、この国を二分して争う貴族の名家だ。
(私には無関係なはずだったのに......一晩の内に両方の名前も聞くことになるなんて)
「で、君に 『身体で払って』 もらいたいことなんだが...貴族の令嬢になって、ブラッドレイ家の舞踏会へ、出掛けてくれないかな」
「......え......?」
(私が、貴族の令嬢として......舞踏会に?)
「一体、何のためにそんなこと......?」
「欲しい物があってね。でも、正攻法じゃちょっと手に入らない。だから君に取って来てもらえると、すごくありがたいんだ」
(つまり...舞踏会にまぎれて、敵地に忍び込めってこと...?)
「っ...私はただの一般市民ですよ...?」
驚きを隠しきれず、テリザは聞き返した。
「知ってる。だけど君には、令嬢に
なれる素質が十分ある!」
自信たっぷりにラッドは言い放った。
「大丈夫だ。身分を誰にも秘密にする...それさえテリザが守ってくれればな」
(そ、そんな......)