イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
その時、ラッドの隣に控えていたハルの声が、リビングに低く響いた。
「...ラッド様、失礼ですが、私は賛成出来ません。他人である彼女をクロムウェル家の問題に巻き込むのは、リスクが大き過ぎます」
「ハル、お前は今日1日テリザと一緒にいたんだろ?これ以上ない適任だと俺は思ったんだが...お前は?」
「............」
ラッドの軽やかな問い掛けに、ハルはふっと押し黙った。
(ハルさん...?)
「...ひとまず彼女は休ませます。続きはのちほど」
納得の行かない様子のまま、ハルは話を切り上げた。
「来い、テリザ」
「は、はい...」
強引に腕を引かれて、テリザはハルとドアへと向かう。
「あ、テリザ、ひとつ言い忘れたけど...」
後ろからラッドの声が追いかけてきた。
「舞踏会には沢山の貴族の男性が集まっているが...君のような可愛いレディを前にすれば、紳士がオオカミに変わることもある」
(え......!?)
「くれぐれも、気をつけるようにな」