イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
「ローガン…さま…」
「君は、あのときの令嬢ではないか。」
テリザは怯えて後ずさるが、ゴツン、地面に置かれたトランクにつまずき、転びそうになる。腕を伸ばし、それを優雅に支えたのもローガンだった。
「このような時間に出歩くとは……不用心にもほどがある。それでもブラッドレイ家の令嬢か。」
「……え?」
テリザは彼をぼんやりと見上げる。
(ダメだ…頭が…。)
熱にうかされているのか、うまく考えられない。ただ、彼が自分の事情を勘違いしているということだけがわかった。
「来い。君の親に話をつけてくる。」
「きゃっ…」
ぐっと腕を引かれ、馬車に乗せられそうになった。しかしふらりと体の傾いた彼女を、優しく受け止めた人がいた。
「ローガン様。レディの扱いはそのようにするものではありません。」