イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
「―――珍しいですね。ローガン様がご意見を変えるとは。」
ユアンは口を開いた。
「君は馬車から放り出されたいのか?」
「いえ、まさか。ただ思ったことを言っただけです。」
顔色一つ変えずに答えたユアンから目線を外し、ローガンはテリザの小さな体を見下ろした。
彼女は微かに震えていて、苦しそうな呼吸をしている。
「……。」
ユアンは自分の上着を脱いで、ローガンの視線から隠すようにその体にかけた。
「拾った令嬢を死なせるのは本意ではない。」
ともすれば冷たくも聞こえる台詞だが、彼の言葉の奥には、ほんの少しの優しさが含まれているように、ユアンには思えた。