イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
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さむい。さむい。
くるしい。
テリザはぶるぶると肩を震わせ、苦しげな呼吸を零した。
―――ああ、ごめんなさい。
ごめんなさい、ラッド様。
ごめんなさい……愛しいあなた。
胸が、ずきずきと痛む。げほげほと痛ましい咳が止まらない。
こんな苦しい夜には、いつも思い出す。
……否。
いつも、覚えている。
あの人に犯した、罪。
自分の愚かしさ。
そしてあの人の、苦しそうな顔。
そしていつも、零れそうな涙を我慢する。
―――ごめんなさい。
あなたを苦しめて、ごめんなさい。
産まれてきてしまって……ごめんなさい。
つと、テリザは肩と、背中にぬくもりを感じた。
背中をさする、大きな手。
(誰………?)
しかしテリザには、目を開く気力もなかった。こんな優しさは自分にふさわしくないと思うのに、甘えてしまいたい…との弱さが顔を出してしまう。
(ごめんなさい………。)
テリザはそのぬくもりに身を任せ、とろとろと眠りに落ちていった。
一抹の罪悪感と、自己嫌悪を胸に留めたまま。