イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
***
翌朝。テリザは、己の咳で目を覚ました。
胸に何かが詰まったような痛みが走り、思わず呻き声が上がる。
「……起きたか。」
低く、落ち着いた声に、テリザは目を見開いた。
「…!」
クリスさん、と言おうとして、咳が代わりに出てしまい、テリザは止まった。そんなテリザを再びベッドに寝かせ、クリスは言い聞かせた。
「お前は馬鹿か。病人なんだからじっとしていろ。」
「あの…ここは…?」
「教会だ。お前はそんな体で雨の中をふらふらしやがって、ブラッドレイ家の奴らに拾われたんだ。覚えてないのか?」
それを聞いて、テリザはさっと青ざめた。一刻も早くリングランドを出ないとと思っていたのに。だがクリスは、焦って体を起こそうとするテリザの額を強めにはじいた。
「痛っ」
「肺炎になりそうになってるんだ、放置するともっと痛くなるぞ」
「そんな…きっといつもの発作ですから、大丈夫です」
咳混じりにそう言ってごまかそうとしたが、クリスは馬鹿にしたような目つきでテリザを見下ろした。