イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
「俺は医者だ。そんなことで騙せると思わないことだな」
「…!!!」
(医者って…医者?でも、クリスさんは牧師さんで…)
ぐるぐると考え出すと、頭が痛くなってきた。根負けしてベッドに体を沈めると、クリスはギシッと音と立て、ベッドの隣の椅子に座った。
「どういうつもりで屋敷を出た?」
「………」
当然、その質問は来るだろうとは思っていた。だがテリザも咄嗟に答えることはできなかった。
「……私の…あそこでの仕事は、終わりましたから。」
ゆっくりとそれだけ言うと、クリスはしばらく何も言わずにテリザの顔を見つめていた。じっと見られることに不慣れなテリザは居心地が悪くて目を逸らすと、ようやくクリスは口を開いた。
「それで、ラッドにも言わずに出たのか?」
「……すみません」
「俺に謝ってどうする。」
「……」
彼女にそれ以上話す意志がなさそうだとわかると、クリスは立ち上がった。
「ラッドには俺から連絡しておくから、お前は休んで…」
「駄目です」
かすれた声だったが、テリザはきっぱりと言った。