イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
「ラッド様と私は、もう何の関係もありません。連絡、しないでください。」
「あいにくだが、俺はあいつが心配しておたおたしてる無様な様子は見たくない」
「置手紙をしましたから…大丈夫です」
───あいつは、そんなもので納得しそうになかった。
クリスはそう思ったが、口をつぐんだ。
「……勝手にしろ。責任は取らないからな」
「はい…。ありがとうございます」
「……」
クリスは黙ってテーブルの上の薬瓶を片付けだした。もそもそとテリザが少し動く気配がして、やがて止まる。しかしクリスは、テリザが眠ってなどいないことには気がついていた。
不意に、テリザの小さな声がした。
「あの……」
「何だ」
不愛想に答えると、テリザはもう一度すみませんと言った。
「着替えとか…荷物とか…いろいろ、その…ごめんなさい。」
文章になっていない。裸を見られて恥ずかしいのと、迷惑をかけていたたまれない気持ちとが入り混じった言葉のようだ。
「どうでもいいことを気にするよりさっさと寝ろ。」
「はい…。すみません」
「…お前はここに来てから何回謝るつもりだ」
「ごめんなさい」
「だから…」
言いかけて、クリスは止まった。いきなりテリザがゲホゲホと激しく咳込んだのだ。