イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
クリスはテリザの背中をさすり、テリザが少し落ち着いたタイミングで水の入ったコップを錠剤と共に差し出した。
「飲め。風邪と咳止めの薬だ。」
ありがとうございます、とテリザが言おうとすると、クリスは手で制した。
「喋るな。喉に触る」
「……」
テリザはこくりと頷き、少し考えてから、クリスの手を取った。不意打ちに驚くクリスの掌に、「Thank you」とテリザは書いてから、ふいっと目を逸らして錠剤を水で飲み下した。
「何か欲しいものはあるか」
クリスが言うと、テリザはふるりと首を振りかけたが止まり、身振りで、書くものが欲しいと伝えた。ああ…とクリスは棚を探り、藁半紙とペンを渡すと、テリザは目礼し、さらさらと荒い紙面にペンを走らせてから、クリスに見せた。
代金はおいくらでしょうか、との言葉が目に入ると、クリスは溜息をついて顔をしかめた。
「気を遣うな、鬱陶しい。治ったらまとめて貰ってやる」
テリザは少し迷ったようだったが、ごめんなさい…でも教えてください、と書いて見せた。