イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
テリザは言葉を失ったまま、ハルに屋敷の一室へと案内された。
「この部屋を使え。今夜は...ゆっくり休め」
「はい...」
表情を強張らせるテリザを見つめ、ハルは静かに呟く。
「...あまり心配はするな。私も出来る限り君をサポートする」
そう告げると、ハルは行ってしまった。
―――とんでもないことになってしまった。
(さっきは驚いて、ラッド様に何も言えなかったけど......でも、自分でしてしまったことだから......自分で、なんとかしないと)
なんとか気持ちを奮い起そうと、彼女はぎゅっと手のひらを握りしめた。
(ちゃんと解決して...この街での新しい生活を、きちんと始めないと。)
息を吐き出し、胸に手を当てた。
(明日の朝ラッド様に...もう一度お詫びして、引き受けるって、お話ししよう)
カチ、カチと時計の音に顔を上げた。
(あ….全部の部屋に置いてるのかな…?)
貴族の方は違うな…と思いながら、ベッドに座った。壁際の鏡に映りこんだ自分の表情は青白く、どこか不安げだ。
(せめてここでは…できることをできたら、いい。)
テリザは静かに目を伏せた。