イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
「……お前は」
「?」
「お前は、馬鹿だ。」
「は…?」
思わず声を出してしまうと、また咳込んでしまう。するとクリスは呆れてテリザの背中をさすりながらも返した。
「好意って言葉を知らないのか?」
「…?」
「言っておくが、俺のじゃない。あいつ…ラッドの奴の、だ」
「………」
テリザは黙って俯いた。
知りたくない。そんなものを、知りたくなどない。そんなもの、自分に相応しくない。もらってしまったら、勘違いしてしまいそうになるから。
自分が、許されていい存在なのだと。
生きていていいと。
「あいつは、俺が言えば二つ返事でお前の治療費でも何でも出すぞ」
嫌です、と言うようにテリザは首を横に振った。
絶対に、嫌だ。もたれかかっては、甘えてしまう。せっかくあの屋敷を出た意味がない。
愛というものが嫌いだ。…いや、自分に対する愛が嫌いだ。気持ち悪い。穢い者を愛するとは、どこかおかしいのではないかとすら考えそうになる。