イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
「そこまで分かってるなら話は早いだろうが。あいつを追いかけることがあいつのためになるとでも思ってるのか?」
「は……?」
「ああまで自虐的になった人間に、愛だの恋だのを押し付けて何になる。あいつが死にそう?よく分かってるじゃないか。あの女は、好意を拒否してるんだ。受け取ったら、あいつの価値観が崩壊するからだ」
「何を、言ってるんだ…?」
愛や恋。そういったものではないと否定することよりも、クリスの言葉はアレクにとって衝撃だった。
クリスは淡々と続けた。
「いいか。あいつは今、この教会の二階にいる。だけどそれをラッドに伝えて何になる?ラッドの野郎はあの女を連れ戻してあの二人は結ばれ、めでたしめでたしとでも行くと思ってるなら、それは大間違いだ。あいつはぶっ壊れてるんだ。好意を押し付けて、それ以上に壊してやるな」