イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
眠れないままテリザがベッドに入った頃...――
ラッドは、リングランドの外れにある、小さな教会を訪れていた。
「夜遅くに悪いな、クリス牧師」
「どうかご遠慮なさらずお入り下さい」
クリス牧師と呼ばれた金髪碧眼の男が、柔らかい笑みでラッドを出迎える。
「神に祈ろうとここを訪れた方が、牧師の私に気遣いなど無用です」
「今日は、あんたのお祈りを聞きに来た訳じゃない」
ラッドはふっと真剣な表情で返した。
「それは...残念です。他に、私にどんなご用が?」
ラッドは懐から皮袋を取り出し、クリスの手のひらに無造作に載せた。
ゆるく縛られた袋の口から......詰められた金貨がきらりと光る。
「............」
「神の祝福の代わりに...今夜開かれる、ブラッドレイ家の舞踏会の招待状を用意してもらいたい」
ラッドのひと言を聞き、不意にクリスは口元に不穏な笑みを浮かべた。
「――...面白そうな話だな」
先程とは打って変わって、低い声で
クリスは言う。
「詳しく聴こうか?」