イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
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ぼうっとしているだけで、一日が過ぎる。病気の療養中とはえてしてそういうものなのだと、テリザは思った。少し体は楽になってきたが、頭痛が残っているので、クリスに本でも借りて読もうにも、集中しづらい。療養中の両親はこんな生活をしているのだろうか、と思うと、二人が少し可哀想に思えた。
あれから二日が経っていた。クリスはテリザの言葉をラッドに伝えてくれたらしい。ラッドの返事は、求めなかった。しかしクリスが何も言ってこないことからすると、彼が、ラッドがここに来るのを止めてくれたのかもしれない。
ラッドは来なかったが、アレクとユアンは来た。見舞いだとぶっきらぼうに言って、アレクは梨とイチジクを置いていった。ユアンは何故か、やたらと熱烈に心配をしていて、無駄に大きなフラワーバスケットを持ってきてクリスの顔をしかめさせた。
二人の気持ちは嬉しかったが、リングランドを出ることができなかったという情けなさと、自分の覚悟の中途半端さを、テリザは思い知らされることとなった。ずるずるとなし崩しのようにここに留まり、テリザの胸はラッドの好意に潰れそうになっていた。
だが体調は心情とは逆に良くなっていく。近いうちにブルーベルに戻らねばならないということを、テリザは肌で感じていた。