イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
イチジクを食べ終えたテリザが皮をゴミ箱に捨てると、クリスが入ってきた。
「体調はどうだ」
「あ…はい。もうだいぶ良くなってます」
気持ちは最悪だけど、との悪態が心の中で渦巻く。
少し声は掠れているが、言わなければ分からない程度だ。口を開けろ、と言われたテリザが大人しく従うと、クリスは彼女の喉の奥をライトで照らして、頷いた。
「あと二、三日薬を飲んで大人しくしていれば大丈夫だ」
テリザが曖昧に頷くと、クリスは朝の分の薬とコップの水を渡してきた。
「あの…」
「何だ」
ぞんざいな口調で返され、テリザは少し怯んだが、少しの間を置いてから答えた。
「クリスさんは…どこで寝てるんですか?」
「どこでもいいだろ」
相変わらず、クリスの返答は素っ気ない。
「良くないです…お世話になってるんですから」
「一人で眠れないとでも言うのか?子供じゃあるまいし」
「……」
これ以上続けても無駄だと悟り、テリザはベッドに体を沈ませた。