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イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~

第7章 雨の音



   ***


二日後になって、ようやくテリザはブルーベルに復帰した。荷物は、教会でまとめてある。仕事の後に宿を探し、明日からは宿から出勤すればいい。

幸いなことに、ブルーベルにハルやラッドの姿はなかった。代わりに、カウンターの後ろにはいつも通りにアレクがいた。


「アレク…おはよう」

「おー」


緊張が声に滲んでしまったが、アレクはさして気にした様子もなく、いつもと同じように不愛想な声で答えてくれた。


「ごめんね、ずっと来てなくて…。今日からはいつも通りに、」

「なあ。お前、もう屋敷には戻らないのか?」

「……え?」


はっきりと聞こえたにも関わらず、テリザは思わず聞き返してしまった。アレクは、表情を変えずにテリザを見据えていたが、困惑したテリザの様子に、がしがしと頭の後ろをかいた。


「…わりー。責めるつもりじゃねー。ただ、お前が急にいなくなったから…変な感じがするんだよ」

「そ、うなんだ…。うん、ごめん…。もうラッド様のお世話になるのは申し訳なくて」

「だから、謝るなって。俺がいじめてるみたいだろ」


こつんと額を突かれ、テリザは小さく微笑んで首を竦めた。


「お前、これからも教会にいるのか?」

「ううん。流石に、今日出るつもりだよ。どこかの宿を借りようかなって思ってる」

「そーかよ。気を付けろよ、治安のいいところを選ばないと、やばい奴に忍び込まれる」

「それはちょっと…ううん、かなり困るね」


テリザが笑ったのを見て、アレクは安心したように微笑した。


「じゃ、開店準備にかかるか」

「はーい」


テリザはいそいそとエプロンをかけ、いつもと変りなく、準備に取り掛かった。

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