テキストサイズ

イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~

第7章 雨の音



テリザは、懸命に微笑んだ。


「私…ラッド様のことが、好きです」

「テリザ…」


ラッドの目が、大きく見開かれた。


「でも…ラッド様のお気持ちは、受け取れません」


テリザの言葉に、ラッドは打ちのめされたように悲しげな表情をする。それに小さな後悔が胸をよぎったが、テリザはそれでも言葉を続けた。


「あなたに近づく自信がないんです。怖いんです」

「それは俺も同じだ」

「ごめんなさい」

「テリザ!」


背を向けたテリザの手首を、ラッドは乱暴に掴んだ。


「っ!!」

「頼む…君まで、どこかに行ってしまったら…」


消え入りそうな声に、胸が引き裂かれた。テリザは、息を飲んだ。


「…時間を…ください…」


ああ、とラッドが息を漏らした。


「分かった。…怖がらせて、すまなかった」


テリザは悲しげに微笑んで、首を横に振った。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ