イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
翌朝...――
(人生で一番豪華な朝食だったな......緊張した)
ラッドとハルと一緒に朝食を終えて、紅茶を飲みながらテリザは深く息をついていた。
「ごちそうさまでした、とても美味しかったです」
「テリザのお気に召して何よりだ」
(――...昨日の話の続きを、きちんとさせてもらおう)
「あの...ラッド様」
「ん?」
テリザはティーカップを置いて、新聞を広げているラッドに向き合った。
「大切なティーカップを割ったこと、本当に...申し訳なく思っています。ですから...舞踏会へ行ってラッド様との約束を果たせるよう、頑張ろうと思います」
(本当は、すごく......不安だけど)
するとハルは黙って目をそらしたが、ラッドは穏やかな笑みを見せた。
「............」
「そうか...ありがとう。俺の目に、狂いはなかったな」
「え...?」
「いや、こっちの話だ。それじゃ頼んだぞ、テリザ」
ラッドは立ち上がると、テリザの肩をぽん、と叩いてリビングを出て行った。
「............」
(ハルさんは......やっぱり、反対してるみたいだな)
険しい表情のハルをそっと盗み見ていると――
(あれ...? 何だろう)
廊下から、女性の明るい歓声が響いて来た。
「到着したようだ」
「到着...?」
ハルの呟きに、テリザは首を傾げた。
「君に会わせるために、ある男を呼んだ。こちらから出迎えに行く。君も一緒に来てもらおう」