イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第8章 織りなす言葉
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兄が食事を終え、帰って行くと、テリザは自分を戒めるように喉を強くつねった。そうでもしていないと、何かおかしなことを叫び出してしまいそうだった。
(しっかり、しなきゃ)
自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど、心臓が苦しくなっていく。それでも、心の中で言わずにはいられなかった。何かが、首の周りに絡みつき、絞めつけていく。肺に酸素が生き渡らず、眩暈がした。体が、心より先に拒絶を示しているようだった。考えないようにすればするほど、胸の奥がどす黒いもので支配されていく。
(どうして、来たの。どうして、どうして、どうして)
兄のことは、大好きだ。家族として、愛している。実らせる気はなくとも、新しい恋をして、進めるつもりだった。だから兄は、もう過去のことだ。そう思うのに、心の奥から、何かが違うと囁きかけてくる。