イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第8章 織りなす言葉
表面上は、テリザはいつも通りに装っていた。無理に笑顔を作り、客を迎えたが、まかないの昼食だけはどうしても受けつけられず、少しつついただけで殆ど残してしまった。幸か不幸か、アレクとはシフトがずれていたので、テリザは残したものを廃棄した。
(いつかはまた、会うって、分かってたのに、)
急すぎて、心が追いついていなかった。
大好きな、兄なのに。
どうしてこんなにも、胸がざわつくのだろうか。
理由は分かっていても、自分に問わずにはいられなかった。
午後の仕事中、アレクに、何があったと聞かれたが、テリザはそれをはぐらかした。兄が原因だと、薄々気づかれてはいたかもしれない。だがテリザがアレクの何か言いたげな視線から逃れ、顔を背けてしまった。
(ごめんなさい)
気遣いに応えることは、できない。少なくとも今は、そんなことができない。