イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第9章 追憶
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何かがおかしいと、そう気がついたのは、母の言葉からだった。
男の人には気を付けないといけないのよ。そうしないと、あなたの身が穢されることになりかねないから。
母は、そう言った。母はただ、夜道は気を付けないといけないということを言っているだけだったが、テリザはどきりとした。
自分は、穢された身なのだろうか。体を触られるということは、ああいう行為は、そういう意味なのだろうか。
心臓が収縮し、胸が言い知れない痛みに覆われていった。足元が崩れていくような心地。自分が見てきたものがすべて揺らいでいくような気持ちに、テリザは襲われていた。
その矢先のことだった。
ラルフが、頭を下げた。