イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第9章 追憶
テリザの学校の成績は家の誰よりも良く、必ず上から一桁の成績になっていた。
テリザには、それが嬉しかった。自分が価値あるものだと初めて認められたような気がして、ひたすら勉強に打ち込んだ。父はそんなテリザの成績を落とすまいと、益々厳しくした。父から本を投げつけられ、泣きながらも、テリザは教科書への書き込みと暗記を続けた。勉強は、大嫌いだった。それでも良い成績を取れば自分の居場所が認められるようで、手を抜くことはなかった。
だがそれも、高等部に入る頃には終わった。
父は比較的収入の良い職に就いていたため、女のテリザでも、賢いからという理由で教育を受けることは許されたが、成績優秀者に認められる特進課に入らされたことが仇となった。一度成績が落ちれば、あとは坂を転がり落ちるようだった。地を這うような成績を見てあからさまに溜息をついて不機嫌になった父を見て、テリザは小さくなっていることしかできなかった。成績優秀という武器を失ったテリザには、もう何も残されていなかった。余計に試験勉強などする気が失せ、みるみる成績は落ちた。
テリザは、やっと掴みかけた一筋の希望を失った。