イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第3章 舞踏会
「テリザ、手、出せ」
「え...?」
「早くしろ」
大きな手のひらにぐいっと手首を掴まれ、引き寄せられる。
(...っ...)
アレクの顔がすぐそばまで近付いて、緊張してぴたりと動きを止めると、丁寧な手つきで、するりとテリザの手首にブレスレットをはめた。
「もう落とすなよ。そこそこ似合ってるし」
アレクが何気なく呟いた。
(......似合ってる...?)
はっとして頭をあげると、間近でアレクと視線が絡み合った。
「なんだよ」
「...そこそこは...余計です。」
「俺は正直なんだよ」
アレクの口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。
それを目にした途端...少しだけ心
が和らいだ気がした。
「......ありがとうございます、アレクさん。」
「おー」
すぐに無愛想な表情に戻り、アレクはバルコニーから去って行った。
アレクがはめてくれたブレスレットに、テリザは静かに目を落とした。
まだ、胸はざわめく。ここにいてはいけない。ここにいたら、何かが起きる予感がする。それでも…
(ちょっとだけ、勇気が出たかもしれない......)