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イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~

第3章 舞踏会



そして、その夜...――


(これが...――貴族の、舞踏会なんだ...)


テリザは、ハルとリュカにエスコートされ、ブラッドレイ家の広間に足を踏み入れた。


(こんなこと思ってる場合じゃないけど......本当に素敵)


美しく着飾った男性と女性が、シャンデリアの下にひしめいて、シャンパングラスを傾け談笑したり、優雅にダンスを楽しんだりしている。


(この中に、私は......これから令嬢として、乗り込むんだ)


手の中の招待状に目を落として、ここに来るまでの出来事を思い出した。




『それじゃ、周りは敵の貴族の方ばかりってことですか...?』

ハルとリュカに挟まれて自動車に揺られながら、説明を受けたテリザは言った。

『ああ。今夜開かれるのはブラッドレイ家の親族のみが集う舞踏会だからな。これがその招待状だ』

ハルは平然と説明をしながら、蜜蝋で封をされた招待状を手渡してきた。

『俺と一緒に出席して、君をエスコートするから、心配しないで』

リュカが励ますように言い添える。

『それで、私は...舞踏会に言って具体的には何をすればいいんですか?』

『君には、ブラッドレイ家の当主......ローガン様の部屋へ行き、ある物を取って来てもらう』

『え...っ』

ハルの言葉に、テリザは微かに身じろぎした。

(ローガン=ブラッドレイ様って言ったら......)


その名前は、リングランドどころか国じゅうの人が知っている。不動産業で巨万の富を築き上げた、名家であるブラッドレイ家の当主だ。


(じゃあ、ラッド様と敵対してる張本人の部屋に行けってこと...なのか。)


『そこまでしてラッド様が欲しい物って...一体、何なんですか?』

『ラッド様が所望しているのは、一枚のコインだ』


(コイン...?)


『王冠が印されているコインで、見れば分かるとラッド様は仰っていた。言っておくが貨幣としての価値はない。玩具のような代物だ』

『どうして......敵の屋敷に忍び込んでまで、ラッド様はそんなものが欲しいんですか?』

『それは......君は知らなくていい』

静かに口を閉じたハルは、それ以上事情を話す気がなさそうだった。

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