イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第3章 舞踏会
「っ......」
顎をぐいっと引き寄せられ、ローガンの腕の中で大きくのけぞってしまう。
「答えろ、レディ」
恐ろしいほど深い色の瞳に見据えられ、身を強張らせたその時――
「ローガン様、恐らくその女性は...社交界にデビューされたばかりのレディでは?」
(え...?)
銀色の髪をした男性が口を開いた。
驚くテリザとは裏腹に、男性は淡々と続ける。
「慣れない屋敷の中で迷われたのでしょう」
「......そうなのか?」
ローガンに尋ねられ、テリザは急いで頷く。
「そ、そうなのです...! ローガン様のお部屋とは知らず、大変失礼しました!」
「成程、筋は通っている」
ローガンは愉しげに笑うと、胸元に差していた薔薇を一輪手に取り、テリザに差し出した。
「疑いをかけた詫びだ、レディ」
「...っ...そんな、お詫びだなんて...」
「受け取れ。私の胸元より、美しい女の手元を飾る方が相応しい花だ」
「...恐れ入ります...」
テリザはこわごわ、深紅の薔薇へ手を伸ばした。
「......だが」