イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第3章 舞踏会
(......っ)
すんでのところでかわされ、テリザの指先が止まった。手の甲を、長い指が、つ、と手の甲をたどった。
「私の部屋に許可なく入るな。故意でなくとも二度はない」
「は、い......すみませんでした」
ローガンは薔薇をテリザの手に受け取らせた。
「ユアン、行くぞ」
プラチナブロンドの男性に声をかけ、ローガンは離れて行った。
(た、助かった......この人...ユアン様のお陰だ)
だけど、今度はユアンがテリザのそばへと近づいて来る。
「あ、あの...」
ユアンは、テリザの手からすっと薔薇を奪うと...
「この方がもっといい」
目線を逸らさないまま、テリザの髪に、薔薇の花を飾った。
「本当に、貴女はその花が似合う」
(......そんなこと、真顔で言うなんて......何て答えたら...)
そうしてから、彼はふっと真剣な表情になった。
「何が目的かは知らないけど、もっと気をつけた方がいい」
「え...?」
驚くテリザを置いて踵を返し、ユアンはすぐに立ち去ってしまった。
(今の言葉は、どういう意味なんだろう......)
テリザは髪に刺された薔薇の花びらに触れた。ふわりと甘い香りが広がる。